324.タヌキとキツネ(周裕)
「裕太、ちょっと話があるんだけど」
「分かった。……あ。ちょっと待って」
「何?」
「いや、ちょっと……これで、よしっと。えーっと。なんだっけ?」
「……裕太。今、何してたの?」
「え?何のことだ?」
「眉毛にツバなんかつけて。おまじない?」
「オレ、別にそんなことしてねーけど」
「……言っとくけどね、裕太。僕は狐でも狸でもなく、人間だからね?それに、裕太にだけは嘘は吐かない」
「嘘だ。観月さんは、兄貴がオレに言うことは全部嘘だって言ってたぜ」
「観月が、ねぇ。……例えば、どんなこと?」
「それは……その」
「何」
「兄貴がオレを、好きだ、とか。そういうっ。……本当は観月さんの気を引きたっ」
「それ、本気で信じたの?」
「……だって、兄貴。観月さんの名前出すと、異常に反応する、し」
「それは、裕太の口から僕以外の名前が出てくるからだよ」
「でもだって」
「裕太。……そうだな。じゃあ、そのおまじないを信じても良いよ。そうすれば、騙されないんだろ?」
「…………」
「ということは、もし裕太が僕の言葉を信じたら、それは本当のことだったってことだ」
「それは」
「裕太」
「っ」
「好きだよ、裕太。だから、もう帰っておいで。もう誰にも、裕太を傷つけさせたりしないから」
「…………」
「裕太」
「……そつき」
「裕太?」
「観月さんの、嘘吐き。全然きかねーじゃん。このまじない」
(2010/3/28)
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