334.これだけは現実になってほしくない正夢(はるみち) |
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「タリスマンは必ず見つけ出してみせる。……例え誰を犠牲にしても」 何度も言ってきた科白。だが、最近はこの言葉を口にする度に僕の中に言い知れない不安が広がる。 「はるか……。大丈夫よ。私がついているわ」 彼女は僕の不安を読み取り、手を握っては微笑んでくれる。けど。 そんなことじゃないんだよ、みちる。 僕が不安に思っていること。自分の言葉に迷いを感じ始めてるのは。誰かを犠牲にすることじゃない。 セーラームーンたちが現れるようになった頃だ。その頃から、僕は沈黙の夢の他に別の夢も見るようになった。 それは、ネプチューンの、みちるの中にタリスマンが潜んでいるという、悪夢。 夢の中で、僕は彼女のタリスマンを手にしていた。抜き出したのは妖魔なのか僕なのかは分からない。 だが、タリスマンを手にすることに迷っていなかったことは事実だ。 事実?いや、あれは夢だ。事実じゃない。 でも実際にそうなったら僕はどうする?やはりタリスマンを手にするのか?平和のために?誰の? みちるを犠牲にして地球を守ったところで、最早そこは僕の居場所じゃない。みちるの居る星だからこそ守る価値があるのに。 「みちる」 「なあに?」 「……タリスマンの持ち主はいつになったら見つかるのかな?」 「大丈夫よ。いずれ見つかるわ。それに、敵もタリスマンを探しているということは、見つからない限りこれ以上派手な動きは出来ないということよ。大丈夫。まだ、間に合うわ」 「そうだな」 あの夢が正夢になるくらいなら。このままタリスマンが見つからず、いつまでもこうして妖魔を倒し続ける日々を送るほうがマシだと思うのは間違いなのだろうか? ……きっと、間違いなのだろう。僕は戦士だ。分かってる。だからこの言葉を繰り返すんだ。 「タリスマンは必ず見つけ出す。誰を、犠牲にしても」 その先にある平和の中に僕の未来が見つけられなくなったとしても。 |
(2009/12/13) |
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