344.アミーゴ!(不二塚)
 僕たちって、友達だったことってあったのかな。
 手塚と大石がトレーニングメニューについて話し合っている様を見ながら、ふと思った。
 会話なんて、想いを告げるまで殆どしたことがなかった。でも、じゃあ何で好きになったんだって聞かれても、分からない。
 一目ぼれ? そうかもしれない。あとは、憬れ。
 そう。憬れ。もしかしたら、この感情は恋なんかじゃなくて、いまだ憬れの中なのかもしれない。
 ねぇ、手塚。僕は本当に君を好きなのかな?
「どうした?」
「えっ?」
「あと少しで終わらせる。だからそんな顔をするな」
 突然振り向いた手塚は、僕にそう言うとまた視線をホワイトボードに戻した。ペンを持った手塚の手が、僕の名前をなぞる。
 会話なんて、なくても。伝わるものってあるのかもしれないな。
 何となく、他の文字よりも優しく書かれているように見える、自分の名前。それを嬉しく思うことが、僕が手塚を好きであるということなのかもしれない、なんて思う。
 そう、きっと僕たちは。会話のないところできっと繋がっていたんだ。出会ったときから。
 そして、会話を交わすようになった、今も。
(2010/04/08)
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