347.中古品(不二榊)
「榊さんて、何でも新品で集めるんですね」
「レコードは中古もあるが」
「それは、新品では手に入らないからでしょう?」
「それではいけないのか?」
「榊さんは同じもので新品と中古品があった場合は、新品を買うんですね」
「一度人の手に渡ったものを、どうして欲しいと思う?」
「じゃあ、僕は?」
「君?」
「僕も、あなたと出会う前は人のものでしたよ」
「君は誰のものでもなかっただろう?」
「でも、身体は重ねてた。誰のものでもなかったけど、誰のものでもあったんです。そんな僕を、どうして欲しいと思ったんですか?」
「さぁ、どうしてだろうな。……新古、だったからかもしれないな」
「新古、ね」
「不満か?」
「少し。……明確な、理由が欲しかったもので」
「ふ。聞いたところで、すぐに忘れるのだろう?」
「今の僕は、知りたいんですよ」
「知りたければ。聞き出してみたらどうだ?」
「あるんですか?明確な理由」
「何となく、で欲しいものに。私はこんなに手間をかけたりはしない」
「手間、ですか」
「そこらへんは、中古品のようだな」
「新品らしさは、若さだけですか?」
「君はまだ、何にも染まっていない」
「あなたが、染めると?」
「私には無理だ」
「やってもいないうちから、諦めるんですね。……まぁ、いいか。じゃあ」
「何だ?」
「何だ、じゃないですよ。聞き出しに入るんです。僕を欲しいと思った、明確な理由を」
「そうか。……せいぜい、頑張りたまえ」
「その余裕、いいですね。ほんと、そういうところ、好きですよ。榊さん……」
(2010/04/28)
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