358.目が、笑ってないようだが(不二ヤマ)
「君は心の底から何かを楽しむことがありますか?」
「何? 急に」
「今日の騒動。一年生は皆楽しく騒いでいましたが。君だけ、目が笑っていませんでした」
「僕も楽しかったよ。その後、竜崎先生に酷く怒られちゃったけど」
「だとしたら、無意識なのでしょうか」
「え?」
「君はいつも、哀しそうな目をして笑う……」
「大和、くん?」
「君が、心から見せる笑顔をボクは見てみたい。いえ、笑顔じゃなくても構いません。君の目から、その哀しい色を取り除けるのなら」
「ねぇ。何を言ってるのか、分からないよ。僕はいつだって」
「物事を楽しまないといけないと、思い込んでるんじゃないんですか?」
「えっ?」
「怒ったっていいんです。泣いたって。笑ってないといけないなんてことは、ありません。感情を束縛する権利は、誰にもないんですよ?」
「…………」
「不二くん。一度、泣いてみませんか? 怒るのでもいい。兎に角、一度ボクに溜まったものをぶつけてください。吐き出せずにいる感情総て」
「…………」
「不二くん。ボクを信じて。笑顔じゃない君を見たからと言って、ボクは君を嫌いになったりはしませんから」
「大和クン……」
「ここが嫌なら、ボクのうちに行きましょう。後日でもいい。兎に角ボクは」
「気持ちは、嬉しいけど。でも、無理だよ」
「何故?」
「嫌なんだ、そういうの。僕は、例え無理をしてでも笑ってたい。その方が、気持ちが楽なんだ」
「楽なのに、どうしてそんな泣きそうな顔をするんですか?」
「僕にはそんな顔をしてる意識はないよ。だから……。きっと、そんな風に見える大和くんの目が、可笑しいんだよ」
「……君は、どうして」
「ねぇ。もう、帰ろう?」
「不二くん」
「なあに?」
「それでもボクは、君が、好きですよ」
「……僕も。大和くんが好きだよ。きっと、信じてはくれてないんだろうけど」
「そんなことっ」
「帰ろう? 一緒に」
「……わかり、ました。帰りましょう。一緒に」
(2010/05/30)
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