359.相手の気持ちを考えて(はるみち)
「天王さん。これ、差し入れです」
「……悪いけど。僕は見ず知らずの人から物をもらう趣味はないんだ。手作りのものなら、尚更ね」

「少し、冷たいんじゃなくて?」
「みちる。見てたのか?」
「当たり前じゃない」
「当たり前、ね」
「あの子、あのクッキー、きっと貴女のために一所懸命作ったのよ」
「ふぅん」
「それだけ?」
「それだけって?」
「もう少し相手の気持ちくらい考えてあげてもいいと思うわ。貴女は、貴女を想ってくれている相手に冷たすぎるのよ。……私と」
「君が最初に話しかけてきてくれたときは、面食らってただけだよ。僕の日常を変えてしまうその人が、突然現れたんだから」
「……それは」
「でも、僕はこれでも人の気持ちを考えてるつもりなんだけど」
「そうかしら。あれで相手の気持ちを考えているのだとしたら、随分と心根の冷たい人だわ」
「勘違いしないでくれよ。僕は相手の気持ちなんて言ってないぜ?」
「じゃあ誰の気持ちを考えているというの?」
「君の気持ちだよ、みちる」
「私、の?」
「そう。君の気持ち。僕が断ったからそんなこと言ってるけど、快く貰ったら貰ったで、どうせヤキモチ妬くんだろ?」
「それは……そう、かもしれない、けれど。でも」
「分かった。もう少し考えるよ。君のことも、僕に好意を抱いてくれている君以外の人のことも。そうだな、6対4くらいの割合で。それならいいだろ?」
「…………」
「みちる?」
「……8:2で」
「了解」
(2010/03/17)
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送