376.良くも悪くも(はるみち&エルザ)
「あれ? みちるは?」
「今日は週番だから日誌を書いてるわ。もう少ししたら来ると思うけど」
「そう」
「…………」
「なに?」
「ここのところ、毎日じゃない? いいの? 部活は。そんなんじゃ、次の大会、私が貰うわよ」
「ご親切に、どぉも。でも、黙っておいた方がいいんじゃないのかい?」
「いいの。練習不足のライバルに勝ったって、面白くもなんともないから」
「なるほどね。勝つ気でいるわけだ」
「当たり前でしょ。恋にうつつを抜かしてる人に負けたら、いい笑いものだわ」
「……別に。恋なんかじゃ」
「じゃあなんなのよ?」
「なんだろうな」
「なにそれ。恋じゃないっていうのなら、みちる、返してもらえないかな?」
「返す?」
「そう。前からだけど、ここ最近のみちるは以前に増してあなたのことばかりで」
「……そう、なんだ」
「まぁ、みちるは秀才だから、勉強なんかには問題はないんだけど」
「だったらいいじゃないか」
「よーくーなーいーっ。毎日お昼にのろけ話を聞かされるこっちの身にもなってよ」
「何。みちる、僕のこと話してるのか?」
「気になる?」
「……別に」
「でも、本当は気になるんだ?」
「気にならないっていってるだろ」
「分かった。分かったから、そんなにムキにならないで」
「君が、しつこいからだろ」
「でも、何をしているかは話してくれないのよね。ねぇ、いつも二人で何をしてるの?」
「別に。やましいことじゃないさ」
「当たり前でしょ」
「っそういう意味じゃなくて! ……なんていうかな。良くも悪くも、運命共同体なんだ」
「だから一緒にいるって?」
「まぁ、そ……」
「それって、良く? それとも、悪く?」
「え?」
「良くも悪くもって。どっちの割合の方が高いのかな? 返答次第じゃ」
「良く、だよ。今の僕にとってはね。ただ……みちるの方は、どう思ってるか分からないけど」
「バカだねぇ、あんた」
「なに」
「悪かったら、私が聞かされるのは、のろけばなしじゃなくて愚痴になるはずでしょ?」
「……ああ、そうか」
「まったく。みちるは――」
「なあに? エルザ」
「うわっ、みちる!」
「はるか。待たせてしまってごめんなさい」
「いいや。丁度いい暇潰しがいたから」
「なにそれ」
「エルザも。はるかの相手をしていてくれて、ありがとう」
「いえいえ」
「はぁ。……じゃあ、行こうか? みちる」
「ええ。でも」
「あ。私? 私はほら、部活があるから。誰かさんと違って、うつつを抜かしてる暇なんてないの」
「おい!」
「なんのこと?」
「い、いいから。行こうぜ、みちる」
「ええ。じゃあ、エルザ。また、明日」
「うん。また明日ね、みちる」
(2010/05/21)
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