381.甲斐性(はるみち)
「どうして? いいじゃない。もう殆ど一緒に暮らしているようなものなのだから」
「だって、ほら、その。なんていうか。僕には、甲斐性が無いから」
「甲斐性だなんて。だって私達はまだ未成年よ?」
「でも、君は。絵画があるじゃないか」
「展覧会を開くだけで売りには出してないわ」
「音楽だってある」
「あれは、母が主宰しているから」
「それでも、収入はあるだろ?」
「それはそうだけれど。それをいうなら、はるかだって。レースに出てるじゃない」
「レースの賞金なんてかたが知れてるさ」
「じゃあ今までの生活はどうしていたの?」
「……知ってるくせに」
「親からの援助を、そのまま続けて行く気は無いのね」
「成人するまでの約束だったけど、君と共に暮らすなら、早々に打ち切るさ」
「どうして」
「だってかっこわるいだろ?」
「だから。私達、まだ未成年なのよ?」
「それでも、だ。君と暮らすって言うことは、なんていうか、その、つまり、だな。僕としては」
「はるかとしては?」
「……結婚生活、に。近いもの、だと。思ってて。だから、その」
「ふふ」
「笑うなよ」
「そうじゃなくって。はるか、私の旦那さまになってくれるのね?」
「他に何があるって言うんだよ」
「私の奥様」
「……冗談だろ?」
「もちろん、冗談よ」
「ったく。……って。そうじゃなくて。だから」
「ねぇ。最近は主夫というのも流行っているの。知っていて?」
「……CM契約とか結べば、きっと収入はあるんだろうけど」
「はるかさん?」
「なぁ、みちる。僕が他の誰かと共演していても、君は大丈夫?」
「はるか。私の話、聞いてる?」
「聞いてない」
「嘘つきね」
「まぁね。……それで。僕の方の話の続きなんだけど――」
(2010/04/12)
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