397.ポリシー(蔵黄泉)
「黄泉、一匹逃げたようだが。殺さないのか?」
「ああ」
「いつから無駄な殺生を嫌うようになった?」
「そういうわけではない。ああやって逃がした方が、噂が広まりやすい」
「なるほど。確かに殺したらお前の強さの目撃者はいなくなる」
「そういうことだ」
「……しかし、見たところさっきの奴には仲間がいそうだな。いいのか? 報復に来るかもしれない」
「心配しくれるのか?」
「あいつらをな」
「……お前こそ、いつから無駄な殺生を嫌うようになった?」
「オレは元からだ」
「だが、自分に危害を加えるものは容赦なく殺す。だろう?」
「そうだ」
「それで。俺はお前の言う自分の中には入れてくれないのだな」
「当たり前だ。それともお前は、オレに守られたいのか? これから魔界を征服しようとする男が。単なる、人間風情に」
「……俺はお前を人間だとは思っていない」
「南野(この)姿でもか?」
「どの姿でもだ。蔵馬。俺は」
「オレは、お前を自分の一部にするつもりはない。お前の夢が叶おうが叶うまいが、関係ない」
「だったらどうしてここにいる?」
「……そんなこと、オレが答えると思うか?」
「いいや。そもそも、答えがあると思っていない。そうだろう?」
「違う」
「…………」
「もういいだろう? そろそろ城へ戻らないと、面倒なことになる。お前がどうなろうがオレの知ったことではないが。巻き込まれるのは、嫌だ」
「……仕方がないな」
(2010/06/01)
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