398.母さんが夜なべをして・・・(外部ファミリー)
「じゃあ、行ってきます!」
「あっ。ほたる、ちょっと待って」
「なあに、みちるママ」
「はい、これ」
「?」
「手提げ袋。ほたる、本当は買ったものじゃなくて、誰かに作って欲しかったんでしょう? 昨日はるかからプレゼントされたものは、友達と遊びに行く時に使えばいいわ」
「……どうして?」
「え?」
「どうして、ほたるがこっち欲しいって分かったの?」
「私も幼い頃、友達が自分だけの手提げを持っていて。それが凄く羨ましかったから。ほたるも同じ気持ちなんじゃないかなって思ったのだけれど。どう?」
「うん。……ありがとう、みちるママ。ほたる、これ大事にするね」
「大丈夫よ、ほたる。使い古したら、また作ってあげるから。だから、ちゃんと使ってあげて」
「うんっ。じゃあ、みちるママ、行ってきます!」
「行ってらっしゃい」

「……満足?」
「はるか。もしかして、ほたるが貴女から貰ったバッグを置いていったこと、怒ってる?」
「別に」
「人にもよるけれど。でも、大抵の子供は、買ったものよりも親に作ってもらったたった一つの、自分専用の何かを喜ぶものよ」
「君が、手に入れられなかったもの?」
「私は、別に」
「欲しかったんだろ? だから、ほら」
「ちょっと、はるかっ」
「手。ほたるに気付かれないように絆創膏剥がしたんだな。どうせ君のことだ。ヴァイオリンの演奏に差し支えるとかで、縫い物もろくにさせてもらえなかったんだろう?」
「もうっ……」
「目の下、クマできてるぜ?」
「うそっ」
「嘘」
「はるかっ!」
「でも、そんなに慌てるってことは、やっぱり昨日、徹夜したんだ」
「…………」
「みちる。満足?」 「それはどういう意味で訊いているのかしら」
「今日一日分の満足、ほたるからちゃんと貰った?」
「そうね。探せばまだ、満足できることはありそうだけれど」
「まぁ、それを言い出したら限がないさ。……さて。じゃあ、みちるさんにはこれから眠ってもらおうかな」
「どうして? 駄目よ、まだお洗濯も残っているのに」
「みちるの今日はこれにて終了。後は僕がやっておくから。とりあえず、お昼まで寝ておきなよ。そのままだと、ほたるのことだからきっと君が無理をしてあれを作ったって気付かれるぜ?」
「はるか……」
「ほら。いいから」
「ねぇ、はるか」
「ん?」
「私は眠ってしまうけど、傍にいてくれるかしら?」
「……勿論だよ。洗濯が、終わってからになるけど。それからでいいなら」
「もう」
(2010/05/02)
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