399.やたらめったら(不二タカ)
「タカさん、腕見せて」
「えっ?」
「いいから」
「っ。痛いよ、不二」
「軽く捻っただけでこれだもの。駄目だよ、タカさん。パワーを鍛えたいからってやたらめったら波動球の練習をすればいいっていうもんじゃないんだから」
「分かってるよ。でも」
「タカさんのパワーは誰にも負けない。それはもう四天宝寺との試合で分かったんだから。タカさんが次の試合に備えてしないといけないことは、パワーを鍛えることじゃないよ」
「そんなこと言ったって、不二。オレは皆より下手なんだから、もっと練習しないと」
「その練習の仕方が駄目だって言ってるの。腕を酷使して、誰かみたいに故障でもしたらどうするの?」
「……すまない」
「ねぇ、タカさん。壁相手じゃなくてさ、僕が相手になってあげるから。球の緩急のつけ方、もうちょっと練習しないかい?」
「不二?」
「長所を伸ばすことも大事だけど、その分苦手なものが浮き彫りになってきちゃってるからね。腕が本調子になるまで、力を抑えて打つっていうのを、ちょっと練習してみようよ。ね?」
「けど。不二はいいのかい? 自分の練習があるんだろ?」
「僕は、もっと正確なコントロールを練習したいんだ。タカさんが打ちやすいボールをあげることでね。僕の技は振りが大きいから。ここぞという時以外は使わないで済むようにしたいんだ」
「そっか。なら、いいけど。本当に、いいのかい?」
「駄目だったら、わざわざタカさんを探して練習場まで来ないよ」
「あ。そういえば、不二。どうしてここに……」
「だから。タカさんを探しに来たんだよ。だからほら、僕の行動を無駄にしたくないなら、さ。ね?」
「うん。分かったよ。不二。……ありがとう」
(2010/05/20)
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