400.スポーツマン(不二榊)
「榊さんって、無駄に筋肉ついてますよね」
 ゆっくりと上下する榊の胸を、ピンと立てた人差し指でなぞりながら不二は言った。呼吸は落ち着きを取り戻してはいるものの、その肌は未だ湿りを帯びている。
「無駄とはどういう意味だ?」
「スポーツマンタイプじゃないはずなのにと思いまして」
 行為のせいで乱れてしまった髪。不二は榊の上に跨ると、その髪を丁寧に撫で付けた。整髪料を使わずとも、その汗で髪型は容易く整う。
「筋肉質な男は嫌いか?」
「榊さんの体、好きですよ。といっても、別に体であなたを選んだわけではないですけど」
 上体を折り曲げ、湿った肌を合わせる。唇も合わせると、不二の体の下で榊の胸が大きく上下した。不二の体も共に上下する。
「美の追求?」
「以前はな」
「今は?」
「君と並んでも見劣りしないようにするため。それと、君を失望させないためだ」
「失望?」
 不思議がる不二の顔を大きな手で包み込むと、今度は榊から唇を重ねた。深く舌を絡ませ、その華奢な体を抱きしめる。
「容易く根を上げてしまっては、詰まらないだろう?」
「なるほど。……優しいんですね」
 榊の胸元でクスクスと肩を震わせて笑うと、不二は視線の先にあったものにそっと噛み付いた。
(2010/03/23)
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