404.愛情の押し売り(蔵飛)
 以前ほど、蔵馬が俺に構わなくなった。
 構わなくなったのとは少し違う、か。余り、俺に対しての想いを見せなくなった。
 飽きられたかと思ったこともあったが、どうやらそうではないらしい。現に、蔵馬は今、こうして俺を抱いている。
 だが、行為の最中に俺の名前を連呼することはなくなった。愛しているなどという甘い言葉を吐くことも少なくなった。ただ、その分、指先や舌は、執拗に俺の体を這っている。
「蔵馬っ」
 舌だけで刺激して、いつまでもそれ以上のものを入れてこようとしない蔵馬に焦れた俺は、名を呼ぶとその髪を強く引っ張った。顔を歪めた蔵馬が、俺の手の動きに合わせて上ってくる。
「もう、待ちきれない?」
「うるさい」
「分かってる」
 何を、分かっているのか。何も分かっていないくせに。
 睨み付ける俺に、蔵馬は微笑むと、その表情とは反対に猛ったものを突き立てた。俺の口から、醜い声が漏れる。
 もっと、声を聞かせて。
 自分の喘ぎを聞きたくなくて強く唇を結ぶたび、蔵馬はそういって舌を使って俺の口を開かせてきた。だが、今はそれをしない。俺が声を漏らすことに躊躇がなくなったからなのかもしれないが。
 愛情を、感じないわけじゃない。ただ、今まで過剰だった分がなくなっただけ。必要以上に俺に構う蔵馬を、ずっと鬱陶しく思っていた。だからこれは、俺が望んでいた適量の愛情。
 それなのに。
「蔵馬……」
 どうして、こんなに淋しさを感じてしまうのか。
(2010/04/14)
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