429.立ち往生(蔵飛)
 こんな所で、何をしている。
 遠ざかってゆく後ろ姿を見つめながら、自分に問いかける。
 蔵馬はこれから、黒鵺とやらに会いに行くという。理由を聞くと、お盆だからと。
 何故、今なのか。それを問うと、コエンマに便宜を図ってもらえることになったからだと言う。
 止めないのかと聞かれた。止める理由など、何処にもなかった。もし俺が止めれば、蔵馬は会うのを止めるといった。それでも、俺は何も言わなかった。
 そして今、霊界に向かおうとしている蔵馬のを馬鹿みたいに眺めている。
 死ぬわけではないのだから、黒鵺と会ったところでそれはほんの一時だ。いや、そうじゃない。別に、蔵馬が何処で誰と会おうと、俺の知ったことではない。
 そのはずなのに。
 蔵馬の背中から視線を外すことがも出来ず、だからと言って呼び止めることも出来ずに、ただ俺はその場に立ち尽くして――。
(2011/08/16)
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