440.口は災いの元(はるみち)
「はるか。ちょっと、外」
「え? ああ。……何だよ、この報道陣の数は」
「昨日、誰かさんが美人な雑誌記者さんとお食事した時に、私たちのことをもらしてしまったせいなんじゃなくて?」
「まさか。僕はそんなこと一言も」
「貴女未成年なのに、だいぶ酔っていたみたいだけれど?」
「そう、だった、かな」
「あら。じゃあ何で二日酔いなんかになっているのかしら」
「……みちるさん、もしかして、怒ってる?」
「もしかしなくてもよ」
「いいだろ、食事くらい」
「本当に食事だけかしら?」
「あのな」
「それよりも、あの報道陣をどうにかしてくださらないかしら? このままでは帰れないわ」
「あいつら本当に僕たちの取材なのか? 僕だけじゃないだろ、ここに住んでる有名人は」
「じゃあどうして、インターフォンが鳴り続けているのかしら」
「えっ?」
「電話も鳴っていたのよ。貴女は眠っていたみたいだけれど」
「別に。帰れないならここで僕と一緒に暮らせばいいだろ?」
「そうはいかないわ。例えそうなるとしても、ヴァイオリンが」
「……分かったよ。どうにかして君を家まで送り届けるから。でも、これだけは信じてくれよ。僕じゃあない」
「どうかしらね。はるかは、女の子を落とすためなら色々話してしまいそうだし」
「憶測で、決め付けないで欲しいな。……っと、電話だ」
「はるか。取材の人だったら」
「大丈夫。お団子頭だ。……どうしたんだい?」
『いま、はるかさんのマンションが大変だってきいて』
「……どうして、それを知ってるのかな?」
『えーっと、その。うーんっと』
「そういえば昨日、君たちサーキットに来てたよね?」
『いや、その、別に。私、はるかさんとみちるさんが付き合ってるみたいとかそんなこと言ってませんよ』
「……へぇ」
『あっ。わっ!』
「……切れた」
「うさぎ、なんだって?」
「どうやら、君の僕に対する疑いは晴れそうだ」
「まさか」
「さあ、どうする? 君は、あの子を叱るのかい?」
「…………」
「ったく。まぁ、僕としては疑いが晴れればそれでいいだけだから。じゃあ、支度しようか。君を無事に家まで送り届けないと」
「……ええ」
(2010/06/26)
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