４４５．一日一膳（はるみち）
「……あれ？」 「なあに？」 「みちる。僕の朝食は？」 「減量中でしょう？　一日一膳よ」 「何だよ、それ。上手いこと言った風な……」 「兎に角。夜に好きなだけ食べて良いから、朝はグレープフルーツで我慢して」 「…………」 「そんな子供みたいにむくれないの。自分で減量するって言い出したのよ？　東京マラソン、出ることになったんでしょう？」 「考えてみたら、僕、短距離走者なんだよな」 「はるか」 「はいはい。……あ」 「なあに？」 「そういえば、食べても太らない、というか、寧ろカロリーを消費するものがあったな。それなら、朝と昼、食べても構わないだろ？」 「ええ。でも……。そんなもの、本当にあるの？」 「あるさ」 「漢方薬とかではないのよね？」 「分からないかな？」 「えっ？」 「今、僕の目の前に用意されてるんだけど」 「……ちょっと、はるか。それってまさか――」
(2010/07/27)