449.沈没船(はるみち)
「豪華客船、か」
「はるか?」
「昔、そういえば君に、ここで酷いことを言ったと思ってさ」
「あの時は、傷ついたわ」
「でもそういえば君も、なかなかのことを言ってたっけ」
「……そうだったかしら?」
「もっと、あの時、好意的に君を見ていれば。あの衣装も、なかなか素敵だったと思うんだ。今みたいなシックなものも似合うけど」
「あれは……。母が選んだもので。私はもっと落ち着いたものがよかったのに」
「けど。可愛かった」
「それはあの時に聞きたかったわ」
「ごめん」
「冗談よ。どうせあの時そんなこと言われても、皮肉にしか聞こえなかったでしょうし」
「……みちる。もしかして、僕をいじめてる?」
「いじめてるって言ったら?」
「哀しくて、この船ごと海に沈んでしまうかもしれないな」
「タイタニック号みたいに?」
「……もしかして、みちる。アレやりたい?」
「えっ?」
「映画公開のときに流行っただろ? 欄干で。……こうやってさ」
「ちょっとはるか。私は、別に」
「みちる、あの映画のビデオ持ってるだろ?」
「……はるか。もしかして、私をいじめてる?」
「って、言ったら?」
「そうね。哀しくて、貴女だけここから突き落としてしまうかもしれないわ」
「……そりゃないぜ、みちる」
(2010/05/26)
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