457.よりを戻す(不二塚)
「よりを戻すのか?」
「何が?」
「大和部長と」
「……僕は今、君と付き合ってると思ってるんだけど。違ったかな?」
「オレは……」
「もし僕が、大和部長とよりを戻したいって言ったら、どうする?」
「どうするも何も、それがお前の気持ちなら」
「諦める? それが手塚の気持ち?」
「何?」
「もう一度僕の気持ちを取り戻そうとは思ってはくれないんだね。君の想いはその程度のものだったんだ」
「違う」
「違わないよ」
「分かっているだけだ。お前がっ。……お前の、気持ちが一度冷めたら。もう二度と、熱を持つことはないと」
「……だから、諦める?」
「諦めるしかないだろう? オレはお前ほど強くはない。自分を見ることはないと分かっていてそれでもなお引き止めていられるほどには」
「それが弱さなのか、強さなのかは、僕には判断できないな。でも、君は。自分の言ってることの矛盾に気付いてないの?」
「矛盾、だと?」
「もし本当に僕が手塚の言うような性格だったとして。じゃあなんで大和くんとよりを戻したりなんかするのかな?」
「それは……」
「バカだね、手塚は」
「なっ」
「もし僕が、君の言うような性格だとしたら、よりを戻す心配なんてしなくていいし。その逆だとしたら、よりを戻そうとする僕をその腕に留めておくことは可能なはずだよ。……手塚に、その気があるのならの話だけど。ねぇ、手塚は僕のこと、好き? 誰にも渡したくないほどに」
「当たり前だろう。お前が誰かの元へ行くことを望まないのであれば、オレはお前を誰にも渡さない」
「……それじゃあ足りないよ」
「なんだと?」
「僕の意思なんて関係ないくらいじゃないと。だって僕は、君の意思なんて関係ないくらいに君を好きなんだ。例え君が他の誰かを見ていたとしても、絶対に離さない」
「言っただろう? オレはそれほど強くはない」
「自信がないだけだよ。君なしで生きていく。強いわけじゃない。……でも、誰にも渡さない。そのためになら幾らでも強くなるつもりだよ」
「……そうか」
「うん」
「なら、いい。もう分かった」
「手塚?」
「お前の性格が何であれ、今は。お前が大和部長とよりを戻すことはないようだ。だからオレは、無駄な心配をするのは止めよう」
「……それだけ?」
「ああ」
「……まぁ、いいか」
(2010/05/24)
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