467.悶々(はるみち)
 なんたって、こんな。
 数分前に別れたばかりで、十数時間後にはまた会うっていうのに、悶々とした気持ちが今日もまた僕を支配する。
 息苦しさにも似た感覚。けれどそれは体が感じているものじゃないから、深呼吸をしても無駄だって分かってる。分かってるけど、僕は何度も深呼吸を繰り返していた。それは、吐いてしまいそうになる溜息を誤魔化すためでもあったのだけれど。
 なんだか納得いかないな。さよならを言った後、一度も振り返らなかった彼女の後ろ姿に思う。
 好きだといっていたのは彼女の方だ。僕は違う。それなのに。
 振り返り、姿が見えなくなるまで立ち尽くしていたのは自分の方で。きっと、こうして、ひとりじゃどうすることも出来ない想いに悩まされているのも自分だけなのだろうと思うと。本当に、納得が行かない。
「ったく。こんなもん、どうやって使うんだよ」
 彼女から渡された通信機。毎日会うのだから必要ないと、その使い方を聞かなかったことをこんな風に後悔するなんて思わなかった。
 けど。
 使い方が分かってたとして、僕は彼女に連絡するのだろうか。
 何と言って? 理由は?
「……馬鹿馬鹿し」
 自嘲の溜息をつき、通信機を無造作にベッドに放る。僕の体はその隣に。
「明日、通信機の使い方、聞いてみるかな。もし1人で戦闘することになったら。僕はまだ、上手く力を使いこなせないし」
 天井に向かって言い訳をしたところで、それを聞くのは自分ひとりだと分かっているけど。よし、と意味もなく呟くと、僕はそのまま目を閉じた。
(2010/6/12)
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