476.上玉(蔵黄泉)
「人間に堕ちても、お前の目はまだ腐っていないようだな」
「何?」
「飛影、とかいったか。あれはお前が見つけ出したのだろう?」
「別にオレが見つけたわけじゃない。偶然出会っただけだ」
「だがそれを運命にしたのはお前の直感だ。違うか?」
「運命、か。随分と陳腐な言葉を使うようになったな」
「…………」
「そうだな。お前の言葉を借りるなら、オレと飛影がそういう関係になったのは運命だ。オレの目がどうこうというわけじゃない。利益なんて考えていない」
「利益なしで他人と付き合えるとは、意外だな」
「そうじゃなければ今こうして魔界にいない」
「……俺の下につくことには利益はないと?」
「あると思うか? オレは人間として生きたいのに」
「しかし、お陰でその飛影とか言う奴に会うことが出来る」
「何年か待てばいいだけの話だ」
「なに?」
「お前らのくだらない党争が終われば、彼はまた、人間界に戻ってくる」
「どうだかな」
「……オレが、目をつけたお宝を逃したことがあったか?」
「蔵馬、お前……」
「利益はないさ。宝なんて、換金しなければ意味がない。愛でているだけでは、寧ろ不利益だ」
「それでも」
「オレは飛影を手放す気はない。もしそれを邪魔しようというのなら、例えお前でも容赦はしない」
「……忘れるな。俺には」
「人質でも何でもとればいい。だが、その時は何をしてでもお前を殺す」
「…………」
「……冗談だ。今のオレにはお前を殺すほどの力はない」
「蔵馬、それは」
「別に構わないだろう? 思ったところで、どうせ出来はしないんだ」
「…………」
(201/06/19)
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