483.甘える隙を探す(ウラネプ)
「助かったわ、ウラヌス」
「そう」
 素っ気無く呟いて、私に手を差し伸べる。躊躇いがちに触れると、強い腕が私を立ち上がらせた。  ふらつく体を、さも当たり前のように抱きしめる。
「ウラヌスっ……」
「戦い通しだったんだ。疲れただろ?」
 戸惑う私に本当に気付いていないのか、彼女は平然とした顔で私を抱きかかえた。遥か遠く、目を凝らさなければ見えないほどの距離にある城に向かって、歩き出す。
「ちょっと待って、ウラヌス。大丈夫よ、私は歩けるわ」
 降ろしてもらおうとその肩を押しやるけれど、彼女の腕が緩まることはなかった。それどころか、落とすまいとさらに強く抱きしめてきて。途中参戦とはいえ、彼女だってそれなりに疲れているはずなのに。
 ゆっくりと体を包み始めた彼女の体温に、どうしたらいいのか分からず戸惑っていると、鼻の先を小さな溜息が掠めた。
 近すぎる距離に躊躇いながら目を向けると、彼女は少しだけ意地悪く笑った。 「君の手当てをしたら、僕は自分の星に戻る。僕を休ませたいと思うなら、速やかな手当てをさせてくれないか?」
 いつだって先回りする彼女の言葉。悔しいけれど何も言い返すことが出来ないから。目をそらし黙って頷くと、また鼻先を溜息が掠めていった。
(2010/06/18)
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