485.ね〜え?(はるほた)
 リビングのソファに座っていると、背後から声がした。
 時間が時間だし、甘えるようなトーンにみちるかと思ったけれど。顔の両脇から伸びてきた手は僕が予想していたものより一回りも二回りも小さかった。そういえば、声も違ったな、なんて今更思う。
「ほたる。眠れないのかい?」
 ギュと僕を抱きしめ、頬を寄せてくるほたるの髪を撫でながら、優しく問う。ほたるは何も言わないかわりに、猫のように頬を摺り合わせた。こんな仕草、どこで覚えたんだか。ふと、みちるの姿が脳裏を過ぎったけれど、こんなこと、せつなに怒られるからってほたるの前ではしてないはずだ。そう思っていただけで、実は見られていたのか。それとも……。
「はるかパパ。お膝、座っていい?」
「……ああ」
 使っている言葉は子供のものなのに、声のトーンや、耳元で囁くその仕草はみちるが二人きりの時に見せるそれとかわらない。
 ったく。このまま成長したら、本当に第二のみちるだな。
 膝にすわり、僕をじっと見つめるほたるに苦笑しながら、その髪を優しく梳いていく。何か、用でもあったのだろうかと思ったけれど、どうやらそうでもないようだ。黙ったままのほたるの瞼が、ゆっくりと下りていく。
 理由もなく突然甘えてくるなんていうのは、みちるじゃなく僕に似たのかもしれないな。僕の服を掴んだまま、早くも寝息を立て始めたほたるに頬を緩ませながら。それでもほんの少しだけ、溜息を吐いた。
(2010/12/07)
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