503.重力(星はる)
「……邪魔だと、思ってたんだけどな」
 オレの胸に手をのせると、天王は言った。何だと聞き返すと、重力、と珍しく答えが返ってきた。
「風に、なりたかったんだ。あの頃は。だから、僕を地上に縛り付ける重力なんて、邪魔なだけだと思ってた。だけど」
 言葉を切ると、天王はゆっくりと体を沈めた。天井を仰ぎ、大きく息を吐く。それに合わせるようにして、オレも知れず止めていた息を吐いた。
 上体を起こしたオレの肩に、しなやかな両腕がのせられる。
「重力があるから。こうして僕は飛ぶことが出来る。……だろ?」
「お前、それって」
 言いかけた言葉を、無視出来ない感覚に止められる。喉の奥で笑うような声に睨みつけたが、天王はそれをもろともせず距離をつめた。
 揺れながら、口付けを交わす。
「……けど、面倒ではあるな。あとはお前が動け」
 本当に面倒くさそうに呟いて動きを止めた天王に、ふざけるなと言い返しそうになったけど。
「ったり前だろ。こういうのは男の役目だ」
 言い切ってニヤリと笑うと、オレは天王の体を何度も重力に逆らわせた。
(2010/6/29)
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