509.メビウスの輪(はるか)
「何故お前は、敵を殺すのを躊躇う?」
「……お前は」
「何故躊躇う?」
「……お前は、誰だ」
「分かってるんだろ。――セーラーウラヌスだ」
「……何で、こんな夢」
「夢じゃないさ。これは魂の記憶」
「結局、僕の一部ということだろ」
「そう。僕はお前の一部だ。お前と同じものなんだよ」
「……訂正、するよ。同じじゃ、ない。僕は。お前みたいに、使命なんて正義を振りかざしたりはしない」
「正義と思っているかいないか。その違いだろ? やっていることは同じだ。躊躇おうと、お前は結局、使命の名の下に敵を殺す」
「…………」
「それなら躊躇うだけ無駄だと思わないか?」
「……うるさい。僕はお前とは違うんだ」
「違わない」
「違う!」
「……僕たちは、メビウスの輪のようなものだ。その道を進めば、いずれ僕の所へ辿り着く。僕たちは、同じものなんだ。裏も表もない」
「そんな」
「同じなら。抗うだけ無駄だろう」
「……それなら。お前が、僕の所にくるんだ」
「何?」
「お前はもう変わることがない。だから、僕がお前の所に行くしかないと思っているだけだ。……お前がもし生きていたら」
「……確かに。一周しないとも限らない、が」
「何?」
「そんな感情は、いずれ磨耗する。これは助言なんだ。無駄は少ない方が良いだろ?」
「……そん、な」
「いずれ、分かる時が来る。僕たちは、抜け出すことの出来ない同じ輪の中に立っているんだから――」
(2010/08/06)
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