514.ヒートアップ(不二リョ)
「もう、終わりにしようか」
「俺、まだまだいけるっすよ」
「僕だって、まだ君と試合したいけど。ほら、辺りを見てごらん?」
「……暗」
「そう。君と打ち合ってるとついつい時間を忘れちゃうけど、そろそろボールだって見えなくなるころだよ」
「ちぇ。何で俺んちのコート、灯りないんだよ」
「しょうがないよ。君のお父さんが勝手に作ったコートなんだから。まさか住職さんに内緒で灯りを設置するわけにも行かないよ」
「それはそうっすけど」
「駄々こねないの。受験勉強の合間に、たまになら、こうして付き合ってあげるから」
「折角白熱してきたのに」
「しょうがないよ」
「……いや。しょうがなくないっす」
「えっ?」
「不二先輩、目ぇ瞑っててもボール打てるじゃないっすか」
「……まぁ、ね」
「俺だって、ボール見なくても打てるし」
「あのねぇ」
「ねっ。いいっしょ?」
「あれって結構集中力、使うんだよ?」
「いいじゃないっすか。ねっ。ねっ」
「でもなぁ」
「周助ぇ」
「やっぱり駄目、かな」
「何で!」
「だって目を瞑ったら、テニスしてるリョーマの姿、見れなくなるから」
「そんなっ……。んなこといって。どうせ試合中はボールばっかりで俺のことなんて見てないくせに」
「そんなことはないよ」
「それはそれで、ムカつく」
「なんで?」
「そんだけ余裕だってことでしょ?」
「必死だよ」
「嘘だ」
「ほんと。だから、僕はもう疲れちゃったよ」
「嘘吐き。さっき、まだ試合したいって言ったくせに」
「あれ? そうだっけ?」
「うー……」
(2010/07/11)
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