515.浮世離れ(不二塚)
「こういうのを、浮世離れしたような、って言うんだろうね」
 オレの胸に耳をあてるようにして重なると、不二は呟いた。荒れた息がまだ湿った肌にあたり、思わず深い息が漏れる。
「お前にも、常識なんてものがあったんだな」
「あるよ。僕のものさしではあるけれど」
 気だるそうに体を持ち上げ、オレの中からずるりとそれを引き出す。遅れて溢れ出してくるものの感覚に息を詰めると、不二は薄く笑った。ごめんね、と呟き、煽っているとしか思えない手つきで処理をする。
「お前」
「だから先に謝ったじゃない」
 指についた白濁としたものを見せ付けるように舐め上げる。その姿に、オレは吐き気を覚えた。
 好きな相手のものだと思うから飲み下せるのであって、それが自分のものであれば。例え相手の体内から掻き出したものだったとしても、口に含むのはオレはごめんだ。
「大分僕に感化された君でも、やっぱりこれはおかしいと思うんだね」
 オレの心を見透かし、けれども笑みを浮かべると不二は唇を寄せた。抵抗もせずにそれを受け入れる。青臭いにおい。けれどそれは不二のにおいであってオレのものではない。そう思うと、先ほど感じた吐き気は何処に行ったのか不思議に思うほど、オレは容易く唾液と混ざったそれを飲み込んだ。
「でももっと、当たり前になりたいな。僕たちの間だけでも」
「充分当たり前だろう?」
「もっとだよ」
 不二の舌が首筋を通り、鎖骨の窪みへと迷い込んでいく。耐え切れず、オレは低く呻くと手をのばした。まだ足りないと、不二のそこを握りこむ。
「まだやるの?」
「そのつもりで謝ったんだろう?」
 昨日から、不二の家族は海外旅行に出かけ。部活があるからと残った不二の部屋に、泊まりに来ている。あれから、もう何度抱き合っただろう。時間という制限がないと、こうも異常になれるのか。
「後悔しても、知らないよ?」
「どうせなら、させるくらいのものをしてみろ」
 だがこれも、いつか常になればいい。そんな風に考えては、押し寄せてくる波に備えて、深く息を吐いた。
(2011/03/22)
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送