522.犯罪すれすれ(不二榊)
「これって、犯罪になるんですかね」
 ネクタイでベッドに縛りあげられた両腕。しっかりと掴まれた腰。最奥に何度も猛る物を突きつけながら、彼は言った。
「さぁ、な。法律も、こういうケースは、想定していないんじゃないのか?」
 目隠しで閉ざされた視界。途切れ途切れに言葉を返すと、彼の動きが止まった。
「やっぱり、珍しいんですかね。でも、榊さんなら。抱きたいと思う人間は多いと思いますよ」
 それよりも、君を抱きたいと思う人間の数の方が圧倒的に多いだろう。言い返しはしなかったが、そんな風に考え、私は笑った。
「何がおかしいんですか?」
「……このままだと、君を抱きしめられないな」
「爪を立てられなくて済むので、助かります」
 クスリと歪められた彼の口が近づいてくる。薄く口を開いて待ち受けると、案の定彼の舌が割り込んできた。遠かった水音が近くなる。そのままの状態で彼が再び動き始めたので、思わずその舌を噛んでしまいそうになった。
「君は、危険なことをするな」
「スリルが好きなんですよ。だから出来れば、これが犯罪であって欲しいと思っています。その方が、スリルが増しますから」
「しかし、見つかればもう二度と私と性交は出来ないぞ」
「それは犯罪じゃなくとも、同じでしょう?」
 私の体を指でなぞりながら、笑う。まるで、そうなることが望みであるかのように。まさか、な。
「君を抱きしめたい」
「駄目。今日は焦れてください」
 囁くように言うと、彼は激しく腰を動かし始めた。
 こうすることで、一体私のどんな欲を煽ろうとしているのか。それを見透かそうと思ったが、心よりも体に響く彼の行動に、私は何も考えられなくなってしまった。
(2010/6/15)
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