523.値踏み(はるみち)
「はるか。はーる−かっ」
「えっ? あ。なに?」
「私と踊るのがそんなに不満?」
「どうして?」
「だって、さっきから周りばかり窺って。それに、目付きだって」
「……みちるは、さ。気にならないのか?」
「何が?」
「周りの奴らの視線」
「……はるかの口からそんな言葉が出てくるとは思わなかったわ」
「そうじゃなくてさ。気付かないか? 周りの奴らの君を見る、値踏みするような目」
「慣れているわ」
「えっ?」
「これでも一応、海王家の娘ですもの。私の参加する社交パーティーは大体そういうものよ」
「そうか。……でも、じゃあ、その『慣れ』は捨ててもらわないとな」
「どうして?」
「僕が、嫌だからさ。君がそんな目で見られるのが」
「……意味が、分からないわ」
「君もそれを嫌になれば、こんなところ、こなくて済むだろ?」
「…………」
「不満?」
「私はそれでも、貴女と踊りたいわ」
「……みちる」
「それに。値踏みされているのなら尚更、見せびらかしたいわ。私の、はるかを」
「……君ってやつは。ほんとに」
「駄目?」
「降参だよ。……じゃあ、僕と踊ってくれるかい?」
「ええ。もちろん」
(2010/06/25)
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