529.アルコール(不二榊)
「いいじゃないですか。一杯くらい」
「駄目だ」
「ケチ」
「……君は、もしかして」
「なんですか?」
「既に、アルコールを口にしているだろう」
「あ。バレました?」
「しかし、空いた瓶はなかったはずだが」
「それはそうですよ。だって僕、一瓶まるまる飲んで捨てましたから」
「なっ……」
「あはっ。驚いてる。榊さん、かわいー」
「君は」
「周助」
「何?」
「しゅーすけって呼んでくださいよ。……たーくん」
「たー……」
「ねぇ。やっぱりこれ、マズいよねぇ? 同じ学校ではないとはいえ、教師の家で、未成年が飲酒なんて」
「当然だろう。君は私をクビにするつもりか?」
「それもいいですねぇ。どうせ榊さん、娯楽で教師をやってるんでしょう?」
「金銭的にはな。だが、やるからには私は手を抜かない。本気で氷帝の生徒たちを愛している」
「妬けるなぁ」
「……君は生徒と同じ扱いをされることを嫌がっていたんじゃなかったのか?」
「嫌ですよ。当然」
「だったら」
「しゅーすけ」
「?」
「ねぇ。さっきからたーくん、君ってしか僕を呼んでない」
「君は」
「しゅーすけ」
「周助、は。そんな細部までこだわる人間だったかな?」
「うん」
「…………」
「ねぇ。僕からアルコールを抜いてよ」
「何?」
「汗をかけば、アルコール、抜けるんでしょう? こっちに来てさ。ねぇ。僕とセックスしよう?」
「酔っているだろう?」
「大丈夫。その分、遠慮なくあなたに色んなことしてあげますから」
「…………」
「ねぇ。良いでしょう? アルコールなんか、僕とのことが終わってから飲んだらいいじゃないですか。いつでも飲めるわけだし。でも、酔った僕なんて、今だけですよ?」
「本当に、君は」
「しゅーすけ」
「……本当に、周助は。どうしてこうも私の理性を乱すのだろうな」
「ふふ。たーくんにとっては、僕はアルコールみたいなもんだね」
「いいや、それよりもたちが悪いな」
「えっ?」
「一度奥まで飲み込めば、それだけで二日酔いは当たり前だ。そして、一度口にすれば、それだけで依存してしまう」
「ふぅん。じゃあ、これから起こること、拒めませんね」
「そういうことになるな」
「……ふふっ」
(2010/08/04)
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