534.パートU(不二塚)
「どうしていつもシリーズものなんだ。しかも1からではなく」
 映画を観ようと不二が持ってきたディスクをデッキに入れ、黒い画面越しに不二に呟く。目を合わせた不二は曖昧に笑うと、リモコンをオレに向けた。
 静電気と共に、不二の姿が見えなくなる。
「シリーズの最初を観て面白かったから。次作は手塚と観ようかなって。いつもそんな感じかな。でも、1を観てなくても内容の分かるものばかりでしょう?」
「そういう問題では」
「真面目だね」
 笑う不二がオレの手を引く。同時にソファに腰を下ろすと、不二の腕が絡みついてきた。映画、観るんじゃなかったのか。唇が触れる前に聞いてはみたけれど、案の定無視をされた。
「段取りちゃんと踏まないと気に喰わない?」
「……気になるだけだ」
「だったら、君から誘えばいいのに。僕は、順番が前後しても構わない性格だから」
 不二の指が、リモコンを操る。小さなノイズを立てて消されたそれは、オレの膝に座る不二の背中を映し出した。自分の顔が見えるのが嫌で、仕方がなく不二を見つめる。
「手塚」
「……オレも、お前が好きだ」
「ん?」
「返事を、ずっとしてなかっただろう」
 ずっと、気になってたんだね。馬鹿にしているわけじゃなく不二は微笑むと、ありがとう、と頷いてキスをした。
(2011/03/11)
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