537.切り張り(はるみち)
 穴だらけの雑誌を閉じ、かわりに手にしたファイルをぱらぱらとめくる。一度読めば内容は頭に入るけれど、こうしてまとめてみると、そういえばと改めて思うこともある。
 それにしても……。
 たった二ヶ月でもう一冊埋まってしまったわ。この前のファイルは、埋まるまでに半年以上かかったというのに。
 それだけ、彼女が世間から注目されているという証拠。喜ばしいはずなのに、淋しさを感じてしまうのはワガママというものなのか。それとも、フリークならば誰しもが抱く感情なのか。
「悪趣味」
 彼女の言葉を思い出し、呟いてみる。
 言われた時は、これは私の習慣のようなものだからと反論はしてみたけれど。今この状態を見ると、悪趣味と言われても仕方がないのかもしれないと、少し思う。
 部屋に貼られた雑誌のポスター。流石に行き過ぎた子たちみたいに自作はしていないけれど、そのかわり、フォトフレームには彼女との写真が飾ってある。……それから、このファイル。
 彼女とコンタクトを取る前からずっと、インタビュー記事などを雑誌から切り抜いてはファイルしてきた。地方でしか売っていない雑誌でも、出来る限り。その冊数はもうすぐ二桁に届く。こんなこと、フリークの子ならやっている子も少なくないと思うのだけれど。
「悪趣味、なのかしら」
 ファイルを閉じ、溜息と共に呟く。
「当たり前だろ。そんなもの読まなくたって、知ることが出来る距離にいるんだから」
「――え?」
 聞こえた声に、慌てて振り返る。いつからそこにいたのか、はるかは困惑を混ぜた笑みを私に向けていた。
(2010/10/18)
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