558.ネタ切れ(星はる)
「うるさい」
「…………」
「何だよ、その顔は」
「いつからいたんだよ」
「お前が帰って来る前。それくらいバカでも分かる」
「そうじゃねぇよ」
「コーヒー、飲むか?」
「え?」
「いらないなら僕……」
「いらねぇなんて言ってねぇだろ」
「じゃあいるんだな?」
「あ、ああ。……あ。でも、知ってると思うけど、インスタントしか」
「買ってきた。サイフォンも」
「……お前」
「別にいいだろ。僕の金だ」
「そうじゃなくて。ここはオレんちだぞ?」
「じゃあお前はインスタントでも飲んでろ」
「いや、あの、その。あるなら、あるで」
「だったら文句言うな。ま、お前にコーヒーの味が分かるとは思えないが。しょうがない。淹れてやるよ」
「……人んちで、えっらそーに」
「何か言ったか?」
「別に」
「で?」
「何だよ」
「ギターなんか持って何をしている?」
「曲作り」
「……ミュージシャンみたいだな」
「みたいじゃなんじゃなくて、ミュージシャンなんだよ、オレは」
「アイドルだろ? それも違うか。アイドルかぶれだ」
「お前……。オレ達の人気を」
「知ってるさ。うちのほたるも、お前たちのファンだからな」
「そ、そうなのか?」
「お前じゃない奴が好きらしいが」
「……あ、そ」
「けど。お前らの曲、今までずっと、えーっと、大気とか言う奴が作ってたんじゃなかったのか?」
「ネタ切れなんだってよ。プリンセスが見つかったから、もう呼びかけるための歌は作れないらしい」
「見つけたら、そこで終わりか。お気楽だな」
「終わることを怖がって始めることも出来ないやつが、何をエラそーに」
「……コーヒー、いらないな?」
「お前なぁ!」
「だから、うるさい。僕は寝てたいんだよ」
「だからって何でオレのベッドで寝てんだよ」
「別に僕が何処で寝たっていいだろ?」
「オレんち以外ならな」
「だったら。合鍵、返そうか?」
「…………」
「お前、バカだろ」
「うるせぇよ」
「それで? 曲は出来たのか?」
「見りゃあ分かるだろ」
「……お前もネタ切れか?」
「何も出す前からネタ切れになるわけねぇだろ」
「一つも作れないっていうより、ネタ切れにしておいた方がマシだろ?」
「……そりゃあ、そうかもしんねーけど」
「お前、やっぱりバカだな」
「何だよ」
「詞だけでも先にあげろよ」
「え?」
「そしたら僕が曲つけてやるよ。宿泊費代わりに」
「…………」
「何だよ」
「……いや。なんでもねぇよ」
「?」
(2010/08/04)
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送