559.ギネス級(不二リョ)
「化けモンだらけっすよね、うちのテニス部」
「そう?」
「河村先輩の力は凄いし、英二先輩の動体視力とあの動きは真似できないし、乾先輩のデータ分析力はコンピュータ並だし。誰か一人くらいギネス狙えるんじゃないっすかね」
「でも、去年は全国にもいけなかった」
「うっそ」
「本当」
「それは、三年……アンタたちじゃないっすよ、その上の学年の人たち、が駄目だったんじゃないっすか?」
「ランキング戦は通常、二年生と三年生で行われるんだ。君は例外だけどね。つまり」
「ま、俺には去年の成績なんてカンケーないけど」
「まったく。……でも、去年一人だけ負けなしだった奴はいたよ」
「アンタ?」
「手塚だよ。彼だけは、本物の化け物かもしれないね。鬼ではあるかな。練習の鬼」
「ふぅん」
「興味ない? きっと、この先、君のライバルになる人だよ」
「ライバル、ね。俺、他に倒したい奴いるから」
「へぇ。誰?」
「教えない」
「じゃあ、勝ったら教えて?」
「……まぁ、じゃあ、勝ったら。あ」
「うん?」
「いや。うん。不二先輩のいう通り、手塚部長がもしかしたらライバルになるかもしんないって思って」
「でしょう。手塚だけなら充分全国レベルだからね。きっと君も――」
「そうじゃなくって。テニスじゃなくて、もっと別のことで」
「別のこと?」
「……不二先輩」
「何?」
「俺、強くなります。今よりも、もっと。だから、一緒に全国行きましょう」
「……うん。そうだね」
(2010/11/30)
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