562.金の卵を産む鶏(蔵飛)
「……コレは何だ」
「金の卵を産む鶏」
「ほう。人間界にはそんなものがあっ――」
「嘘ですよ」
「…………」
「全く。すぐに騙されるんだから。人の心は疑うくせに、そういうところだけ妙に素直ですよね」
「うるさい。……で、だったら一体何なんだ?」
「成長したんです。あなたが来なかった数ヶ月の間に」
「は?」
「縁日で買ったじゃないですか。ひよこ」
「そういえば、アイツはどうした。姿を見かけないが」
「何言ってるんですか。だから、あの子が成長したんですよ」
「……?」
「この子が、あのひよこです」
「…………」
「飛影?」
「貴様、また俺を騙そうとっ……!」
「ちょっと。刀、しまってくださいよ。そんなことで嘘を吐いたって仕方がないじゃないですか」
「……どの口がそれをいう?」
「ああ、もう。知らなかったんですか? ひよこは成長するとにわとりになるんです」
「見た目が全然違うだろう。大きさだけじゃなく、色も」
「……人に世話を押し付けるからそうなるんですよ。プーだって、幽助が覚醒する前と後では全然違うでしょう?」
「アレとコレとは」
「とにかく。はい」
「……なんだ?」
「毎朝五月蝿いんですよ。ご近所さんからも苦情が来ていましてね。ここから先は、あなたが責任を持って育ててください」
「ま、待て。コイツを、俺がか?」
「ええ。嫌なら、雪菜ちゃんのところで育ててもらうか、ああ、食べるっていうのもいいですね」
「食べ……。美味いのか?」
「牛肉は牛の肉。豚肉は豚の肉。鶏肉はにわとりの肉。何度も口にしているはずですよ?」
「…………」
「どうします? 食べちゃいましょうか。今から調理すれば、夕飯に間に合う」
「…………」
「飛影?」
「……てくる」
「え?」
「雪菜の所に、行ってくる」
「はい。いってらっしゃい」
(2010/11/19)
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