572.ふきでもの(外部ファミリー)
「……はぁ」
「朝から溜息なんて、見ていて気持ちのいいもんじゃないな。しかも鏡を見つめてさ」
「はるか」
「おはよう、せつな。その様子だと君は寝てないみたいだね」
「ええ。今週中に仕上げないといけない論文がありまして」
「大変だな。研究員も」
「バカにしてます?」
「まさか。人には向き不向きがあるからね。今日は家のこと、僕がやるよ」
「珍しい」
「今日はオフだし。何より、みちるがいないんじゃ。家事でもするしかないだろ?」
「私の体を気遣ってとは、間違っても言わないんですね」
「言って欲しい? ただ、それがあいつに知れた後」
「いいです。あなたはみちるのためだけに動いていてください」
「だろ」
「……はぁ」
「何だよ」
「いえ。あなたがたのことではなくて。ふきでものが」
「え?」
「あ。いえ、なんでも」
「ああ、ほんとだ」
「うるさいですよ」
「自分で言い出したんだろ」
「不健康さで言えばあなただって大して変わらないと思うんですけどね」
「……僕はほら、肌に良いといわれること、してるから」
「え?」
「まぁ、それもここ数日はお預けくらってるけど」
「……ああ」
「なんなら、試してみるかい?」
「そういう冗談は言うんですね」
「本気だから言ってるんだよ」
「……みちるに嫌われますよ?」
「バレたら、ね」
「…………」
「…………」
「……全く。真顔でそんな冗談を言っているから、相手は本気にするし、みちるだって怒るんですよ」
「本気にしたんだ?」
「するわけないでしょう」
「だよな。……くっ」
「なんですか行き成り笑ったりして」
「いやいや。ふきでもの、ね」
「え?」
「まだ、そんな言い方をするには早くないか?」
「…………」
「…………」
「……はるかっ!」
(2011/03/19)
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