591.星降る夜(外部ファミリー)
「晴れてよかったですね」
「え?」
「七夕」
「ああ。そうだな。ほたる、楽しみにしてたし」
「あなたもでしょう、はるか」
「僕は……」
「去年、随分と楽しそうでしたけど」
「……まぁ、でも、そうだな。去年、し忘れた願いがあるから。楽しみだったかな」
「あなたって人は」
「子供じみてる?」
「そうではありませんが。これ以上、願うことなんてなかったのではありませんか?」
「……僕たちはね」
「どういうことです?」
「君の倖せを、願い忘れてたなって。勿論、家族としての倖せは願ったけどさ」
「…………」
「なんて顔してんだよ。せつな」
「みちるに拗ねられても知りませんよ?」
「大丈夫。みちるはそこまで心狭くないさ」
「だったらどうしてほたるの行動を見逃せないんでしょうね?」
「それは……。僕が、信用されてないのかな?」
「はぁ」
「大丈夫だって」
「あなた方の間でも、願うこと、充分にあるじゃないですか」
「いいんだよ、僕たちは。これくらいの方が。完結してしまったら、詰まらないだろ?」
「みちるは、そうは思っていないと思いますけどね」
「……せつなは、そんなに僕に倖せを願われるのが嫌なのか?」
「そういうわけじゃないですが」
「それとも。みちると同じように無意味だと思ってる?」
「…………」
「僕だって、星が叶えてくれるとは思ってないさ。ただ、それを口にすることで、自分の中に刻み込むことが出来る。ぼんやりと思ってるだけじゃなく、ね」
「はるか……」
「家族としては勿論だけど、それを抜きにしたって僕は君に倖せでいて欲しいんだよ、せつな」
「……ありがとうございます」
「よし。じゃあ、今夜は一緒に飾りつけしようか。去年は僕とほたるの二人で殆どやっちゃったからな」
「ええ。……ん?」
「何?」
「はるか。それはつまりひょっとして、今、私が倖せではないということですか?」
「……えーっと」
「はるかさん?」
「いやあなんかほら、最近溜息が増えてきたみたいだし?」
「……それは、誰のせいだと思ってるんですか!」
「まぁまぁまぁ。あまり怒ると、小じわが増えるぜ?」
「っ。私はまだそんな年ではありませんっ!」
(2010/07/07)
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