593.三連打(不二塚)
「また、返された」
「どうしてお前の新技が返されたか分かるか?」
「……君の方が技術が高かった」
「それも無くはないが。こんなにも早く破られるのは、お前が技を連発するからだ。それだけ見せられれば、それなりのレベルの奴なら攻略法の一つくらいは思いつく」
「自分はそれなりのレベルだって言いたいわけだ。いつの間にそんな自信家になったんだい?」
「自信を持たなければドイツになど行けないからな」
「自信があると、挫折した時のショックは大きいと思うけど」
「お前は、自信を折られたくらいでオレが揺らぐと思うか?」
「……イップスになったくせに」
「…………」
「冗談だよ。っていうか、ねぇ。今黙ったのは、揺らいだからじゃない?」
「うるさい。兎に角、だ。お前は技を出しすぎだ。全国に行ってからは、特に酷かった」
「全国に行ってからって。行く前の僕を、君は知らないじゃない。関東大会での僕を」
「……大石から試合状況は聞いていたし、乾からビデオも送ってもらっていた」
「嘘」
「だと思うのなら、後で二人に聞いてみればいい」
「……手塚、そんなに僕のこと」
「オレ無しでまともに試合が出来るのか心配だっただけだ。お前はすぐに手を抜こうとするからな」
「酷いな。人が折角感動してたのに」
「兎に角。お前は技を出す回数を減らせ」
「手塚だって、すぐに手塚ゾーン使うじゃない。今はファントムも使ってる」
「それで、お前はオレの技を攻略できたか?」
「……仁王のイリュージョンだったら。いや、攻略の方法は分かってるんだ」
「オレの打った球の回転を消せすように打ち返せばいい。攻略法は簡単だ。だが、それを出来る者は少ない。特にお前との相性は」
「僕から言えば、最悪、かな。僕は相手の回転を利用する技を出す。君がつけた回転に更に回転をかけたところで、君の元へと球が吸い寄せられてしまう事実には変わりがない。……いや、ちょっと待って」
「何だ?」
「そうか。回転を過剰に与えればいいんだ。そうすれば、君の元へは戻らな――」
「……気付いたか」
「そうか。それなら、ファントムに切り替えればいいだけなんだ」
「そういうことだ」
「……ねぇ、手塚」
「なんだ?」
「僕にもその打ち方、教えてくないかな?」
「……断る」
「いいじゃない。それとも、僕がゾーンを使えるようになると何か不都合でも?」
「あるに決まってるだろう」
「え?」
「オレの腕でもあれは負担が大きいんだ。お前の腕であの技を使えば。どうなるかは、分かるだろう?」
「手塚、そんなに僕のこと……。大丈夫。こう見えて、僕の力が強いことは君が一番よく知ってるはずだよ。忘れちゃってるのなら、今から僕の家に行って思い出させてあげてもいいけど」
「お前。人が折角……」
「冗談。さっきの仕返しだよ。……いいよ、教えてくれなくて。でも、次に君と試合をするときは、僕は絶対に負けないから。だから、約束。絶対にまた、試合しよう?」
「……ああ。そうだな」
(2010/11/16)
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