601.生粋の(蔵&桑)
「そういや、お前ら、生粋の妖怪じゃねぇんだよな」
「え?」
「いや、だってよ? オメーは最初は狐だったんだろ?」
「ええ。まぁ、今までの生を考えると、ほんの一瞬ですが」
「……オメー、ほんとは幾つなんだよ」
「忘れました。大体、狐でいたころは、年齢を数えるなんて感覚、ありませんでしたから」
「まぁそれもそっか。……でだ。飛影は」
「彼は元々妖怪ですよ」
「けどよ、ハーフなんだろ?」
「ハーフ……といえば、まぁ、そうですけど魔界では同属で結ばれる方が珍しいですよ?」
「何で」
「魔界は広いですからね。同属に出会う確立なんて微々たるものなんですよ。群れで行動していれば別ですが、大抵の妖怪は近場で種付けを済ませます」
「……種付け」
「そう、種付け」
「オメーもしたのか?」
「オレは……別に、子孫を残す気なんてありませんでしたから」
「そっか」
「でも、性欲の処理はしてましたけどね。性別に関係なく」
「…………」
「はは。そんな構えなくても大丈夫ですよ。今のオレには飛影がいますから」
「それって……」
「あ。性欲処理のためじゃないですよ。ちゃんと愛してますから」
「けど、やってることにはよぉ!」
「変わりないですけどね。でも、オレの気持ちとしては違いますから」
「……お前らが合意の上ならいいけどよ。で、だ。浦飯も元は人間だったわけだろ?」
「まあ、そうですね」
「なんだかなぁ」
「不満ですか?」
「そういうわけじゃねぇけどよ」
「そういえば、桑原くんは生粋の人間ですよね。いや、でも、その霊感の強さは、先祖を辿ると何処かで」
「恐ろしいこと言うなよ」
「……恐ろしい?」
「え。あ、いや……」
「……そう、恐ろしいんですか」
「蔵馬?」
「だったらいっそのこと、今、妖怪の血をその体に入れてみますか? そうすれば、もう恐ろしいとか言ってられなくなると思いますけど?」
「悪かった。悪かったから。オメー、ちょっと、こっち来るなよ。おいっ!」
(2010/07/24)
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