609.非常識という名の常識(星はる)
「お前、今何時だと思ってるんだ?」
「……午前三時」
「どう考えても、こんな時間にチャイムを鳴らすなんて非常識だろ」
「そうだな」
「お前、分かってて……」
「僕だって、何が非常識かくらい分かってるさ」
「だったらなぁ」
「分かっているが、お前に対して常識的な行動をとる理由は無い」
「はぁ?」
「いいから、入れろよ。寒いだろ。それに、僕がお前のマンションの前にいるところ、誰かに見られても構わないのかな?」
「……こんな時間。ブンヤだって寝てるっつーの。それに、お前がそこに立ってるからって、誰もオレとは結びつけねぇよ」
「そうか。じゃあ僕はお前が開けてくれるまでここで待ってるとするかな」
「はぁ?」
「嫌なら、入れろ」
「つぅか帰れよ」
「断る」
「お前……。そんなにオレが好きなのか?」
「そうだ」
「なっ……」
「言葉を詰まらせるな。冗談だ」
「ったり前だ。気色悪い。つぅかだったら帰れよ」
「帰らせてみろよ」
「は?」
「僕がここにいるのが迷惑なら、どうにかして帰らせればいいだろ?」
「……なんかお前、無茶苦茶なこと言ってねぇか?」
「さぁ?」
「……分かった。開けてやるよ。ただし、条件がある」
「条件?」
「どうしてそうまでして、夜中にオレの部屋に来たがったのか。その理由を言ったら、中に入れてやってもいいぜ?」
「……お前さ。何を期待してるんだ?」
「は?」
「僕がここに来る理由なんて、一つしかないだろ。なのにわざわざ聞くなんて。別の答えを期待しているのか、それとも忘れるほどに馬鹿なのか」
「…………」
「念のために、言った方がいいか? 今度は忘れ――」
「入れよ。その代わり、用が済んだらさっさと帰れよな」
「…………」
「おい、何で無言なんだよ。返事しろよ!」
(2010/11/13)
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