611.値切る(はるみち)
「もう」
「何怒ってるんだよ」
「だって、あんなに値切るんですもの」
「あのなぁ。フリーマーケットなんて、そんなもんだろ?」
「フリーマーケットじゃないわ。骨董市よ」
「何が違うんだよ。大体ああいうのは値切られること前提で値段つけてるんだぜ?」
「そうなの?」
「……なんだよ。知らなかったのか?」
「だって……。お父様もお母様もそんなこと一度も。それに、オークションは底値からはじめるから」
「オークションとフリーマーケットはそれこそ違うさ」
「そう……」
「まぁ、君のことだから、相手の言い値で買ってもそんなに損をするようなものは選ばなかったと思うけどさ」
「…………」
「みちる?」
「でも、はるか、なんだか楽しそうだったわね」
「えっ?」
「骨董市なんて、いつも詰まらなそうだったのに。値切っている時のあなた、生き生きとしていて素敵だったわ」
「……それって、喜んでいいの、かな?」
「素直な感想を言っただけだから。はるかの好きなように受け取ってくれて構わなくてよ?」
「まぁ僕も、交渉してるのは楽しかったけど」
「ねぇ」
「何?」
「それじゃあ、次もまた誘っていいのよね?」
「それって値切って欲しいってこと?」
「違うわ。一緒に居たいということよ」
(2010/07/25)
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