６１４．吹聴して歩く（不二塚＆菊）
「不二、手塚と付き合ってるんだって？」 「……は？」 「照れるなよ。なぁなぁ、もうヤった？　男同士ってどんな感じ？」 「ちょと待って、英二。なに、それ。僕と、手塚が？」 「なんだよ。ガセ？」 「というか、誰から聞いたんだい？」 「ってことはホントなんだ？」 「いいから。誰がそんなこと？」 「不二。顔、怖い……」 「英二」 「……乾が。ビッグニュースだって、部員達に言いまわって」 「乾が？」 「うん。……俺が言いふらしてるってことは、不二には言うなって」 「でも、言っちゃったんだ」 「不二が脅すからだろっ」 「ふふ。好きだよ、そういう英二の恐怖に弱いところ」 「……ちぇ。乾には、俺が言ったって言うなよ！」 「言わないけど。英二自身が乾に問い詰められたら……」 「ま、待って。不二、乾のとこに行く気？」 「行かないよ。情報元が分かればそれで充分だから」 「？　まぁいいや。よかった。……で。実際の所は、どうなの？」 「英二。これ以上僕を、怒らせたい？」 「えーっと。あ、俺、大石をコートで待たせてるんだった――」 「それで。これはどういうことなのかな、手塚」 「……何故オレに言う？」 「僕に抜かりはない。だから、秘密が漏れたのだとしたら君しかいない。漏れたというか、漏らしたんだろ？」 「…………」 「何が、したかったのかな？　みんなに知ってもらって」 「…………」 「もしかして。こんな隠れてするんじゃなくて、部活中も堂々と僕とこんなこと、したかったりするの？」 「……お、れは」 「にしても、乾を使うなんて。考えたね。彼の情報なら、部員はみんな信じる」 「不二、オレは」 「別に、知れ渡ったことを怒ってるんじゃないよ。秘密にしようって言ったのは、君のことを想ってだから。手塚がそれでいいと思うなら、僕もそれでいい。でも」 「……すまない」 「まぁ、もう過ぎたことだから仕方がないけど。もし調子に乗った乾が君にネタを迫ってきた時は。……今度はその内容を直接部員に見せてあげようよ。言葉じゃなく。僕たちが。この口で」 「それは、つまり」 「君が望んだことでしょう？」 「……ああ。そうだな」
(2010/09/18)