615.佳人薄命(はるみち)
「…………」
「なぁに、はるか。そんな怖い顔して」
「怖いと思ってさ」
「なにが?」
「みちるの顔が」
「……それ、どういう意味かしら」
「みちる。顔、怖い」
「そんなの、今更なんじゃなくて?」
「怒るなよ」
「怒らせたのは誰?」
「おいおい。僕が言いたかったのは、君が美人過ぎて怖いってことだよ。それも、つい見惚れてしまうほどに」
「嘘」
「だったら、君のこと、こうして見つめてないさ」
「どうかしら」
「……佳人薄命」
「えっ?」
「って。言うだろ? だからさ。そんな君を、怖いと思ったんだ」
「…………」
「もし。もしもだよ? 君がその美しさのせいで、早死になんかしたら。僕は」
「バカね」
「みちる?」
「安心して。私はそんな簡単には死なないわ」
「けど」
「ねぇ、はるか。私からしたら、貴女の方がよほど美人よ?」
「……冗談だろ?」
「私がこういうことで冗談を言うと思う?」
「……さぁ?」
「ねぇ。貴女は私を置いてさっさと死んでしまうの?」
「何を」
「はるかが私に対して言ったのは、そういうことよ。ねぇ」
「僕は。……そう簡単には死なないさ。君に置いていかれたくはないけど、君を置いていきたくもない」
「それは私も同じよ、はるか。だから、何も怖いことなんてないの」
「…………」
「それにしても、酷い会話ね」
「え?」
「他の人が聞いていたら、ただのバカップルよ、私たち」
「……そう、かな?」
「はるか……」
「何だよ」
「貴女のそういうところ、好きだけれど。少しは自覚をして欲しいわ」
「何を?」
「……もう」
(2010/07/03)
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