623.非常事態(はるみち)
「っみちる!」
「……はる、か?」
「倒れたんだって? ったく、君は人気者だな。うちのクラスにまでニュースとしてそんな話が流れてきたよ」
「え、ええ。だから、今こうして保健室で眠っていたところよ。……それより、授業は?」
「バックレ」
「どうして。敵も出ていないのに……。非常事態以外では授業にちゃんと出る。上層部に怪しまれないように、優良生徒として振舞う約束だったでしょう?」
「非常事態だろ、これは」
「えっ?」
「君が倒れたんだ。これが非常事態じゃなくてなんだっていうんだよ。熱は? 病院は?」
「はるか。ちょっと待って。何を――」
「君を病院に連れて行く。今日は珍しく車で来てるし。海王家お抱えの医者にでも」
「それは駄目よ」
「……どうして」
「そんなことしたら、一人暮らしを止めるように言われてしまうわ。成績を落とさないことは勿論だけれど、健康管理もちゃんとすることが条件だから」
「けど。もし何か酷い病気だったら」
「ただの風邪よ。市販の風邪薬で充分」
「けど……」
「ねぇ、はるか。じゃあ、一つ我侭言っていいかしら?」
「なんだい?」
「私、朝から殆ど何も食べていないの。帰ったら。貴女の、部屋に帰ったら。お粥、作ってくださらない?」
「あ、ああ。そんなことか。分かった。作るよ」
「……分かってないわ」
「え?」
「はるかの手、ひんやりしていて気持ちいいわね」
「……ったく」
(2010/12/02)
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