624.メンドイ(はるみち)
「ねぇ、はるか。お願いよ」
「……面倒臭いな」
「面倒?」
「いや、えっと。君の頼みなら喜んで……って。どうして笑ってるのかな?」
「だって、はるかの口から面倒臭いだなんて言葉、出るとは思わなかったから」
「なんだよ」
「昔のはるかは、何かに追われて、いいえ、何かを追いかけるように物事総て先回りしていたじゃない」
「昔?」
「そうね。前世を受け入れる覚悟を決めるまで、かしら」
「……ああ。そうだな。そうかもしれない。確かに、あの頃の僕は、死を追い求めてた」
「死を?」
「ここには居場所がないと思っていたから。もっとも、居場所のある奴の方が稀少なんだろうけど。あの頃の僕はそんなこと知らなかったから。死にたかったわけじゃないけど、早く時間が過ぎて人生が終わってしまえばと思ってた節があるかな」
「それが今は面倒臭いだなんて。どういう心境の変化なのかしら?」
「訊かなくても、君の頭ならすぐに答えに辿り着くだろ。居場所がないから、僕は死に急いでいた。つまり」
「居場所が出来たということ?」
「君との時間に悔いを残したくはないと思ってはいるけど。悔いが残らないようあれこれすぐに終わらせてしまったら、君との時間も早く終わってしまうような気がして」
「……はるか」
「みちる」
「でもそれは、サボりの言い訳にはならなくてよ?」
「……あ、れ?」
(2011/01/18)
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送