628.フリーク&マニア(はるみち)
「はるか、お待たせ」
「ああ」
「なあに、その顔」
「暑く、ないか。今日」
「そうね。桜が咲いたと思ったら、春の余韻もなく夏が来たっていう感じね。これも、デスバスターズのせいだったりするのかしら」
「まさか。って。そうじゃなくて。君、それ、冬服だろ?」
「ええ」
「暑くないか?」
「仕方がないのよ。衣替えにはまだあと一ヶ月あるんですもの」
「学ランやブレザーだったら暑くなれば脱げるのに、セーラー服じゃそうはいかないか。大変だな」
「教室にエアコンはついているから。厳しいのは外だけね」
「悪い。どっかに入るか? 喫茶店でも」
「ありがと。……でも、大変っていうのなら、貴女の方が大変なんじゃなくて?」
「僕? 僕は暑くなったら上脱げばいいだけだから」
「そうじゃなくて。貴女、今年赴任してきた先生たちに、毎日のように注意されているそうじゃない」
「ああ。まぁ。他の奴等は諦めてくれたんだけど。一人、熱血な奴がいてね。って。僕、話してないよな?」
「そうね」
「何で知って――。愚問か」
「ふふ。……ねぇ。一度セーラー服を着てみたら?」
「え?」
「入学式の時に着たの、持ってるんでしょう?」
「アレはもう小さくて」
「嘘。大き目のもの、買っていたはずよ」
「君はそこまで……。嫌なんだよ。好奇の目に晒されるのが」
「だからよ」
「え?」
「それを理由にジャージを着ていることにすればいいの」
「なるほど。……いや、それは駄目だな」
「どうして?」
「君に、学校をサボらせるわけには行かない」
「……私は別に」
「みちる」
「……じゃあ」
「ん?」
「今度、私のためだけに着てくれる?」
「……マニアか、君は」
「ええ」
「…………」
(2012/04/30)
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