635.アポイント(蔵コエ)
「コエンマ様」
「……飛影のような現れ方をするなと言っているだろう?」
「飛影、あなたの部屋の窓から現れるんですか?」
「そうじゃなくて、お前の……」
「飛影が、オレの部屋に入るところを、あなたは見ている、と」
「……知っておるくせに」
「ええ」
「意地の悪い奴だ」
「それは分かりきったことでしょう。それより」
「入ってくるな。ワシは今日忙しい」
「退屈そうに見えましたけど?」
「……僅かばかりの休憩だ。というか、アポを取れ」
「取らなくても会えるんですから、そんな必要ないでしょう?」
「馬鹿者。本来なら不法侵入で追い出されても可笑しくないんだぞ?」
「でも、あなたはオレを追い出さない。でしょう?」
「……で。何の用だ?」
「いえ。暫く顔を見ていないから、どうしてるのかなと思いまして」
「お前は魔界に行くのには抵抗があるのに、霊界に来るのには抵抗がないんだな」
「ここには、人間として来れますから」
「…………」
「何ですか、その顔は」
「元々この顔だ」
「へぇ」
「それより。ワシは忙しい。どうしているかの答えは、仕事に終われておる。それで充分だろう。分かったらさっさと帰れ」
「…………」
「なんだ、その顔は」
「元からこういう顔ですよ、オレは。……じゃあ、今日はこれで帰ります。暇になるころ、また来ますから」
「今度はちゃんとアポを取ってから来い」
「いいんですか? 他の人に、オレとあなたが会っていると知れても」
「…………」
「でしょう? だからまた。今度も、こうやってあなたに会いに来ますよ。そうすれば、少しは飛影の気持ちも分かりますしね。では」
「……ふん。馬鹿にしおって」
(2010/08/16)
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