636.夜露(外部ファミリー)
「ただいまー」
「おかえり、ほたる」 「はるかパパ、帰ってたんだ。……どうしたの、そんな怖い顔して」
「ほたる。どこ行ってたんだ?」
「……本屋さん。みちるママにはちゃんとそう言ってあるよ」
「こんな時間に、一人で?」
「だってはるかパパ、いなかったんだもん」
「どこを通って?」
「どうしたの?」
「足元」
「えっ?」
「濡れてる。……どっか、草むらにでも入ったのか?」
「……えっと」
「ほたる。怒らないから、言ってごらん」
「…………」
「ほたる」
「…………」
「はるか、駄目よ。そんな言い方しちゃ」
「……みちる」
「みちるママ」
「いい? ほたる。ほたるがそこに行ったことを責めているわけじゃないの。ほたるの行動を縛る権利は私たちにはないわ。でもね。こんな時間に出て行くのだから、行先には嘘は吐かないで欲しい。……どうしてだか、分かる?」
「……ううん」
「ほたるにもしものことが遭ったとき。私達はほたるの言葉を信じて探すしかないの。勿論、他に見当のつきそうな場所は探すわ。だけど」
「ごめんなさい。……ごめんなさい、はるかパパ」
「いいさ。分かってくれれば。ほたるが出かけたいときに居なかった僕も悪いしね。でも、次からは正直に教えてくれよ?」
「うん」
「で。今日は何処に行ってたのかな?」
「あのね、実はね。公園に子猫が――」



「どうするの? 子猫、飼うの?」
「いいや。明日、ほたると里親探しに行ってくることになった」
「そう。……さしずめ、名探偵というところかしらね」
「何?」
「ほたる。足元が夜露で濡れてるからどこか寄り道してたんじゃないかって」
「……ほんとにそう思う?」
「えっ?」
「なぁ、みちる。僕、いつ帰ってきたっけ?」
「確か、ほたるが帰ってくる少しま――。もしかして」
「ま、そういうこと」
「悪趣味ね」
「昔の君を真似しただけだよ。僕の後をつけてたくせに、先回りして偶然会ったように装う、みたいな、さ」
「……気付いてたの?」
「君は徒歩だから。よく髪型乱れてたっけ。繋いだ手も、少し汗ばんでた」
「もう。……悪趣味なんだから」
(2010/10/22)
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