638.どこで道を間違ったんだ・・・(不二リョ)
「俺たち、何処で道を間違えたんでしょうね」
「俺たち? それは違うよ。間違えたのは、僕だけだ」
「好きです。不二先輩が」
「知ってる」
「俺を抱いたってことは、一緒に道を間違えてくれたってことは。信じていいんすよね?」
「……だから。道を間違えたのは、僕だけだよ」
「だって、俺」
「僕はまだ、君を好きなわけじゃない」
「――え?」
「僕が行くべき道はここじゃない。だから。道を間違えたのは僕だけだ。……君にとっては、望んだ道なんだろうけど」
「そんな。だって」
「君は、抱いて欲しいと言った。僕の気持ちについては何も求めていなかった」
「だから、俺を抱いたんですか?」
「……その、つもりだよ」
「歯切れ、悪いっすね」
「男同士なんて気持ち悪いと思ってた。今でもそれは変わらない。だけど、じゃあ何で僕は君を抱いたんだろう?」
「そんなの。俺が頼んだからっしょ」
「好きでもない相手から嫌いなことを頼まれたとして。僕がそれを断れない人間だと君は思うのかい?」
「……それって」
「道を踏み外しただけなら、まだ軌道修正できる。でも僕は、別の道へと歩き出したんだ。それはどうしたって、本来の道と交わることはない」
「ねぇ、不二先輩。それってさ」
「越前くん」
「リョーマって呼んでよ」
「君はまだ、可愛い後輩だよ」
「じゃあ、その『まだ』が取れたら、リョーマって呼んで」
「……取れたら、ね」
「今歩いてる道の行先はそれなんじゃないの?」
「さぁ? 先の事なんて、誰にも分からないさ。このまま、一度きりで終わるという道だってある」
「そんなことはさせない」
「そう」
「絶対にさせない。先輩が進む道が俺と違うなら、俺がその道を一緒に進みます」
「……そう」
「駄目っすか?」
「好きに、すればいいよ。君が、後悔しないのなら」
「後悔しないために、一緒に歩くんですよ。不二先輩と離れたら、絶対後悔するから」
「……そう」
(2010/07/01)
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