661.目を閉じて(はるみち)
 いつからか、戦闘の後その手に触れようとすると、ウラヌスが身体をビクつかせるようになった。
 さり気ないつもりなのだろうけれど、私の手を避け、変身を解くまでは絶対に触れさせてはくれない。解いた後だって、戦闘の二文字が頭をチラついている間は、腫れ物にでも触るような手つきになる。
 何があったの、なんて訊かなくても分かる。きっと彼女は、なにかを殺めた。
「ねぇ、はるか。目を閉じて? そして、私を思い浮かべて?」
「何だよ、急に」
「お願い」
 訝りながらも従うはるかの前に立ち、その整った顔をじっと見つめる。
 ねぇ、はるか。瞼の裏にいる私と今ここにいる私が同一人物かどうかなんて、そんなこと、貴女は考えたこともないでしょう?
「……もう、いいわ」
 目を開けたはるかがじっと私を見つめる。さっきまで見ていた幻との差異に、少しで気付いてくれればいいと願ったけれど。
「君の唇は、いつになったら僕に届くのかな?」
 短い溜息と共に零した彼女の言葉に、私は呆れると同時に、何故か泣きそうになった。
(201/09/15)
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