691.郵便配達(蔵雪)
「雪菜ちゃん」
「蔵馬さん! どうしたんですか?」
「はい、これ。桑原くんから」
「……また、手紙、ですか」
「そう」
「蔵馬さんは郵便配達員じゃないのに」
「仕方ないですよ。桑原くんは、それを読んだあなたの表情を知りたがってるんですから」
「ということは、やっぱりこれ、読まないと駄目なんですね?」
「そういうことだね」
「……どんな風に伝えてるんですか?」
「え?」
「私の表情。どうだったって、和真さんには言ってるんですか?」
「それは教えられませんね」
「きっと、優しい蔵馬さんのことですから、和真さんが喜ぶような報告をしているんですよね」
「……優しくはないですよ。優しいのなら、桑原くんが想いを寄せている相手に、手を出そうとは思いませんから」
「先に手を出したのは私ですよ?」
「それでも、人間としてのオレなら、桑原くんを優先してあなたを拒絶したと思います」
「それなら」
「あなたと対峙している時のオレは、どんな見た目でも、妖怪としてのオレだっていうことです」
「妖怪が、郵便配達を口実にするんですか」
「恰好悪いですか?」
「……少し。でも、だからこそ、嬉しいです」
(2010/11/13)
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